銀鱗(ぎんりん)

銀鱗

● 魚巣ブロックの開発

開発年度 1977年
開発主旨 当時、護岸工事が集中的に実施され河川の直線化、平瀬化が進んだ。その結果、魚類や水生生物の多様な生息環境の消失、あるいは洪水時には魚類の避難場所がなくなり、特に稚魚等が下流に押し流される事が懸念された。そこで、ブロックに中空部や開口部を設けることにより、魚類などの水生生物、水生植物の平常時の生息・生育空間、洪水時の避難場所となるような護岸ブロックの開発を行った。

● 特徴

魚類の生息場所 広い天端開口部と左右の円形口やブロック同士の組積みにより、採光量の変化や多様な流速場により魚種の習性に適した生息場となる。
魚類の避難場所 ブロック内部は流速が減勢されるため、洪水時に魚類の避難場所になる。
安定性 背面部の合端は上下が突起による噛み合わせ、左右は目地材充填により遮断されるため土砂の吸出しはしない。
施工の省力化 製品形状は、大型化されているので施工の省力化、省人化が可能である。

● 魚巣ブロックに関する調査・実験等

調査年月 調査・実験場所 調査・実験主体 報告書・論文など
1978.01~
1979.02
東京都日野市・水産庁淡水区水産研究所 農林水産省養殖研究所
共和コンクリート工業(株)
丸山為蔵・石田力三(1991):護岸用魚巣ブロックの集魚効果について,水産工学,Vol.28 No.1.
1979.02 栃木県思川 栃木県下都賀漁業共同組合
共和コンクリート工業(株)
思川における魚巣護岸工への魚類の蝟集効果(1979)
1981年 広島大学生物生産学部 水産資源研究室 建設省中国地方建設局岡山河川工事事務所 護岸調査報告書(1982)
1982.06 福島県久慈川 共和コンクリート工業(株) 久慈川上流域における魚巣ブロック護岸工内の魚類観察調査(1982)
1988.09~
1989.02
栃木県野元川 栃木県真岡土木事務所
栃木県水産試験所
共和コンクリート工業(株)
魚巣ブロックの設置効果に関する基礎調査(1989)
1988.09~
1989.05
北海道遊楽部川 共和コンクリート工業(株) 魚巣ブロック「銀鱗」施工後の魚類観察調査(1989)
1994.05~
1994.06
北海道恵庭市 当社技術研究所 共和コンクリート工業(株) 丸山為蔵・石田力三ら(2000):魚巣ブロックの素材が日本産ナマズSilurus(parasilurus)asotusの行動に与える影響,水産工学,Vol.37 No.1.
1994.10~
1994.11
北海道恵庭市 当社技術研究所 共和コンクリート工業(株) 植生魚巣ブロックの集魚効果の実験について(1994)
1999.09~
2001.01
岩手県大槌川 北里大学水産学部
大槌町漁業協同組合
共和コンクリート工業(株)
岩田宗彦ら(2001):魚巣ブロック設置により攪乱した湧水池魚群集の再生
2001.04~
2003.03
(独)土木研究所自然共生研究センター実験河川A 共和コンクリート工業(株) (独)土木研究所(2002):自然共生研究センター研究報告書 本田ら(2003):水際域復元ブロック工法の魚類生息状況に関する調査、土木学会年次講演会

● 製品の改良など

銀鱗Ⅰ型(1977年)~すみか(2001年)

開発から30年近くが経過した。当初、河川や農業用排水路での護岸整備における魚類へ配慮する目的は、直線河道になった箇所で失われた洪水時の避難場の提供であった。しかし河川の自然環境への配慮は今日これに留まらず、水生生物の生息空間の保全、横断方向連続性の保全、適度な水循環の形成、さらに本川から二次支川や水路・水田等までの連続性への確保にも至っている。つまり、水生生物の生活史までを考慮した護岸整備の提案が必要とされる時世になってきた。
このような背景から、2001年(独)土木研究所自然共生研究センター実験河川Aにおいて、魚類の生息環境に関する研究に加え、自然河川の物理現象の復元に関する研究を行った。護岸が、植生と同等の流速低減効果をもち出水時の避難場となりえるか、植生のカバーによる鳥類からの捕食圧の低減効果と同等の効果があるか、餌場等と同等の集魚効果を発揮できるかなど、周辺環境と同等以上の環境を護岸の設置でどの程度復元できるかを検証することを目的とし、魚類生息状況調査に併せてベントス調査、照度の比較調査等を行った。
その実験的研究によって、護岸に凹凸形状、オーバーハング形状を付加することによって以下のような効果を期待できることが分かりました(詳細は投稿文を参照して下さい)。


■ 魚類の生息空間(ハビタット)として、特に冬期の植生が枯れ、コンクリートと同様な単調化するような河岸では魚類の生息空間として効果を期待することが出来るものと思われる。

■ 出水(人工洪水)により、河岸の河床材料の変化を期待し、ベントス(水生昆虫等)の生息空間を多様にする。

● 施工上の留意事項

魚巣ブロックの目的は、魚類の生息環境を確保することである。そのため平常時でも、水深の確保できる場所に設置する。

洪水時に魚巣ブロックの空間に土砂などが堆積しないように留意する。

計画河床、土砂の堆積・侵食状況と現地生息種に合わせて設置する。

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